
【ICP】イーサリアムとの統合の研究開発
昨年末にインターネットコンピューターの長期研究開発にかかわる25の投票が行われました。その中での注目の提案、インターネットコンピューターとイーサリアムに興味がある方向けの記事になります。
- 統合によるインターネットコンピューターへのメリット何なのか
- いつごろ完成するのか
イーサリアムの統合の提案内容にふれ、そのメリットについて紹介します。
目次
イーサリアムとの統合のメイン機能
大まかにインターネットコンピューターがイーサリアムとの統合をすると次のことができるようになります。
- ETH/ERC20トークンの利用
- イーサリアムとのスマートコントラクト
ビットコインとの統合はBTCの利用できるだけでしたがイーサリアムとの連携ではより多くのことができます。
ETH、ERC20トークンの利用
イーサリアムとの統合はETHだけでなく ERC20トークンもインターネットコンピューターで取り扱えるようになります。
ERC20のトークンの有名どころには、TSUD、LINK、SHIB、WBTCなどがありますね。もちろん他にもたくさんのトークンがあり、それら価値あるトークンをインターネットコンピューター上から利用できるようになります。
直接的なメリットとしてはやはりDeFi機能の強化でしょうか。各トークンの価値がインターネットコンピューターになだれ込めば、よりインターネットコンピューターのユーザーを増やすことができます。
加えて、DeFiアプリ自体にも規制をはねのける力をもたせられます。国が管理できないDeFiアプリは規制の対象になることは容易に想像できます。もし、AWSやAzureなど企業のクラウドを利用していると、国などの要請によりサーバーごとアプリを止められてもおかしくありません。
しかし、インターネットコンピューターでDeFiアプリをおけば、完全に分散化され国や企業の意向でアプリが排除されずにDeFiサービスを提供できます。
スマートコントラクトの機能強化2つ
ビットコイン直接統合ではコインのやり取りがメインでしたが、イーサリアムの統合では追加でスマートコントラクトの機能強化があります。
- イーサリアムとのスマートコントラクトサポート
- EVMサポート
スマートコントラクトとは
まずスマートコントラクトとは何か簡単にふれます。端的にいえば、シンプルにコストをかけずに契約することです。
例えば、日本で家を購入するには、買い手と売り手の他に、不動産仲介業者、登記するのに司法書士、ローンを借りるなら銀行と契約をするのに何人もの機関と人がいます。
買い手と売り手の間にいる仲介者は、改ざんを行わない(行う可能性が著しく低い)ので信頼性があるため彼らの作る契約にも信頼性があります。
ただ多くの人が仲介されるため非常にコストがかかります。日本で家を買うのであれば100万以上かかることは珍しくありません。
イーサリアムやインターネットコンピューターでは プログラムを使った契約方法があります。それがスマートコントラクトです。
スマートコントラクトでの契約は改ざんが困難で、元に戻すことのできません。この特性を活かして、多くの信頼された仲介者をを必要とせずに契約を行うことができます。
スマートコントラクトの実例:ID認証
他のスマートコントラクトの例をあげるとID認証ですね。多くの人は Twitter や Google 或いは Yahooのアカウントを使って認証していると思います。 Google に 認証してサービスを使うことは、今では当たり前です。 様々なサービスにGoogleアカウントでログインした時に「 貴方 」であることを保証し、サービス側も「貴方が 貴方 である」ことを信頼します。
スマートコントラクト でID 認証では Google の認証は必要なくなります。
イーサリアムのスマートコントラクトサポート

さて、スマートコントラクトのサポートですが、イーサリアムネットワークとインターネットコンピューターネットワークのそれぞれのスマートコントラクト呼び出しを可能にします。
イーサリアムはEVMと呼ばれる仮想マシンでスマートコントラクトを実行しますが、インターネットコンピューターではキャニスターと呼ばれる仮想マシンで実行しています。異なる仕組みで動いているため、基本的にブロックチェーンをまたいだスマートコントラクトができません。
しかし、今回の研究開発でイーサリアム・インターネットコンピューター間でのスマートコントラクトの相互に呼び出しできるようになります。
EVMのサポート

加えてスマートコントラクトを呼び出すだけでなく、EVMごとサポートも行います。
先ほどのふれたとおり、イーサリアムのスマートコントラクトはEVMという仮想マシンで行われるのですが、このEVMを「インターネットコンピューターで動かそう」という試みです。
Solidity/EVM開発者へ低コストでの実行環境の提供
EVMがインターネットコンピューター上で実行できるようになると何が起こるのでしょうか。
イーサリアムネットワークの利用料は高額かつ変動性があります。イメージにはなりますが、先月は1万円だったコストが翌月2万円になったりするということです。
来月のコストがいくらになるかわからないのは、プログラムを動かす側としてはマイナスです。
しかし、インターネットコンピューターでのサイクルトークン支払いになれば、価格変動率はかなり低く、また低コストでEVMを動かせるようになります。
>> インターネットコンピューターの利用料金は変わらない理由
計算によるサイクルの燃焼=ICPの価値上昇
スマートコントラクトの相互運用、そしてEVMのサポートはインターネットコンピューターにもたらすメリットは何なのか。スマートコントラクトを実行しているアプリがインターネットコンピューター上で構築されることにより、ネットワークとしての価値が高まるのに加えて、アプリ実行による計算によりサイクルおよびICPの燃焼を促進し、ICPの価格を上がりやすくさせます。
改善できないことは
イーサリアムのコスト自体を抑えることはできないということ。インターネットコンピューターからの連携があっても、コストを抑えることができません。EVMなどのコストが下げられるのはインターネットコンピューターで動かすからですが、イーサリアム・ネットワークと連携するときは、イーサリアムの利用料、つまりガス代を支払う必要があります。
これは変わりません。
統合するイーサリアムのバージョンは?
2.0へバージョンアップ中のイーサリアムですが、インターネットコンピューターと統合される機能はイーサリアム1.0の想定とのことです。
なぜ最新の2.0と統合しないのでしょう。
理由は、「バージョンアップ途中」ですね。
バージョンアップ途中というのは厄介で、事前に告知されたバージョンアップ内容が変わることもあるので、統合のために作っていた機能が無駄になる可能性もあります。
無駄にしないためにもイーサリアム 1.0でしっかりと連携できるようにした上で、イーサリアム 2.0へのバージョンアップを計画しているとのことです。1.0に対応していれば、2.0への移行難易度も下がるため「無難な方法」といえますね。
もちろん、インターネットコンピューターのイーサリアム統合よりも2.0の開発完了が早ければ2.0をターゲットに進められるので、今後の両プロジェクトの進捗に注目です。
イーサリアムの統合にかかる時間は?
イーサリアム統合には、数年かかる見込みです。ビットコインの直接統合も半年以上機能開発しているので、より難しいイーサリアム統合が数年かかるのに違和感はありません。
先ほどのイーサリアム 2.0も含めるとさらに時間がかかることが見込まれます。
イーサリアムとのブリッジでの連携

最後に、別のイーサリアム関連のプロジェクトを紹介したいと思います。
Terabethia(テラベシア)イーサリアムとのブリッジによる統合
イーサリアム統合プロジェクトとの違いは、
- EVMサポートは無い
- ERC20に加えてERC721、ERC1155のサポート
特にサポートするトークンの範囲の違いが目を引きます。最初にERC20のサポートをして、そこからERC721、ERC1155と別の規格のトークンをインターネットコンピューターで扱えるようにするとのことです。
ERC721、ERC1155といえばNFTです。NFTの中心もやはりイーサリアム。
イーサリアムで作られたNFTが利用できるようになれば、もちろんインターネットコンピューターの価値が高まるでしょう。
期待です。
Terabethiaはすでにテストの段階に入っているので、イーサリアムとの連携はすぐそこまでに迫っているのかもしれません。
まとめ
- ETHおよびERC20の取引がインターネットコンピューターで可能になる
- Solidity/EVMがインターネットコンピューターで動くようになる
- 統合には数年かかる見込み
- ブリッジに連携するTerabethiaプロジェクトが別である
ビットコインの直接統合の完成がみえてきたからか、2021年末にイーサリアムの統合が提案され投票により可決されました。
完了までには数年かかるのかもしれませんが、インターネットコンピューターの価値を高めるのには十分な機能ではないでしょうか。
それと、気になるのはライバルのブロックチェーンの存在ですね。他のブロックチェーンプロジェクトもEVMサポートに取り組んでいます。Polkadot、Solana、Cosmos etc. イーサリアムの価値があることは周知の事実なので、どのブロックチェーンプロジェクトもイーサリアムと連携がしたいと考えています。
インターネットコンピューターも負けないように進めてほしいです。
ただ、シェア争いになりそうな一方で、EVMをサポートするもの同士、EVMを間に挟めば様々なブロックチェーンと連携できるようになるのではとも考えています。
では。