
IPFSとインターネットコンピューターはともに分散されファイル保存ができるがその違いは?
ファイルを保存するという点において、インターネットコンピューターもIPFSも同じ機能を提供します。
この二つの違いはなんなのか、この記事では掘り下げていきます。
- インターネットコンピューターでしかできない機能
- IPFSが勝る部分
実際のところ、インターネットコンピューターは画像ファイルなども保存することができるわけですが、他のブロックチェーンではIPFSが採用されていたりします。
IPFSがインターネットコンピューターの脅威になるのか見ていきましょう。
目次
ファイルを保存するこのとできるIPFS
IPFS はブロックチェーンと同じく分散技術のひとつで、ファイルを保存しつつ、検閲や規制に対して抵抗を持っています。また、ブロックチェーンの技術と組み合わされて使用されていることも多いです。いくつか例を見てみましょう。
NFTの保存に使われる
IPFSは NFTを 保存することに使われます。特に高品質の画像ファイルなど容量の大きいファイルを保存する時に使っています。
NFTはイーサリアムなどのブロックチェーンで主に取引されていたり多くのプロジェクトが作られています。しかし、 NFT の画像データを保存するだけの容量を確保しようとすると法外な値段を支払わなければなりません。
そこで IPFSの出番です。 IPFSはブロックチェーンと同じく分散化されていて、安価でデータを保存することができます。ICPのストレージ利用料はブロックチェーンの中では割安で利用できる部類ではありますが、単純な価格勝負だとIPFSに軍配があがります。
分散アプリの画面に使われる
NFT と同じくブロックチェーンプロジェクトで利用されている分野、アプリの領域でもIPFSは利用されています。
ブロックチェーン上のアプリは分散アプリ(DApps)と呼ばれやはり、検閲や規制に対して抵抗性を保ちます。ですがNFTと同じ理由で、データとしてブロックチェーン上にアプリの画面を置いてしまうと、費用がかさむためIPFSが利用されます。
実際にUNISWAPのフロントエンド(画面)はIPFSでホストされています。
IPFSの課題点
非常に安く利用できるという ipfs にはメリットがありますが、一方でデメリットもあります。ある種のデータは長期間データを保持できないというデメリットです。
- インセンティブの欠如
- 人気のないファイルは持続が難しい
- NFTがオフライン化
インセンティブの欠如
ブロックチェーンのひとつの特徴は、人々は行動を起こしたくなるような設計、つまりインセンティブが組み込まれていることです。IPFSにはインセンティブの設計がありません。
人気のないファイルは消える
人気のあるファイルは、多くの人がホストします。逆に、誰もデータを持ちたがらない場合はデータが失われることになります。
NFTのオフライン化
データが失われるということは、本来は永続的に所有権を主張できるNFTがオフライン化を引き起こします。気に入ったNFTを購入しても、ある日表示されなくなるなんてことになります。
IPFSの拡張

IPFSもそういったデメリットがあることは知っています。IPFSの開発元がトークンエコノミーをつかってインセンティブを与えることでブロックチェーン化しました。FileCoinです。
FileCoin
プルーフオブワークの変形でファイルを保存し続けているとトークンが支払われるというもの。ファイルを保存するひとと、保存したい人の間に経済的なつながりを与えることで永続性を確保しようとしています。
打倒、AWSのS3の価格。
Arweave
Arweaveは FileCoinとはまた別のIPFSを使ったブロックチェーンです。
インセンティブの設計がFileCoinと異なり一部資産がネットワークにロックしFileCoinよりも高価なストレージです。
特徴的なのは、ストレージコストは毎年30%程度減少していくことを支払いに組み込んでいる点です。昔は256MB(GBではないです)を数千円払っていましたが、同じ価格でどれだけの容量を購入できるのか。
Arweaveはストレージの1GBあたりのコスト減少と支払いの遅延の組み合わせで永続性を高めています。
インターネットコンピューターとIPFSの共通点
インターネットコンピューターのできる領域とIPFSができることの共通点を見てみましょう。ともに分散されていますが、どの程度同じことができるのでしょうか。
画像・HTMLファイルなどの保存と表示
繰り返しにはなりますが、インターネットコンピュータのIPFSも画像などのファイルを保存することができますし、静的なWEBページを表示することが可能です。
近いサーバーから応答が可能
また両者、既存のインターネットの課題・物理的距離の課題を解決します。いわゆるエッジコンピューティングの特徴を持ちます。
あるWEBサイトあるいはWEBサービスが地球の反対側のデータセンターにあるとき、要求した通信が届いて、戻ってくるのに実に地球一周してますね。単純に遠いから、インターネットの速度とはいえ時間が必要です。
分散化されて保存されている場合は違います。地理的にも分散させるため、わざわざ地球の反対側までデータを取りに行かなくても通信可能です。
インターネットコンピューターも一番近いサーバー(実際はキャニスター)からの応答があります.。
現状でもエッジコンピューティングはあるが・・・
現状のhttp(s)でも、CDNという機能を使うことでWEBページの高速化を行っています。例えばGoogleのCDN、AMPというサービスです。
ブラウザを利用しているときに、表示したサイトが別のサイトにも関わらず、URLがGoogleになっていることはありませんか。
非常に高速で表示することができますが、Googleが代理で表示しているような仕組みですね。彼らは様々な場所にデータセンターをもっているゆえに可能な芸当です。
CDNでもいいじゃないかと思われるでしょうが、そもそもCDNは巨大テック企業がサポートしているので、規制・検閲への抵抗は残念ながら少ないです。
中央集権でなく、高速で通信するために「エッジ」が必要なのですが、IPFSもICPもどちらもエッジとしての機能をもたせることができます。
インターネットコンピューターとIPFSの違う箇所
では次にインターネットコンピューターとIPFSの違いに注目します。
計算可能
画像やHTMLなど静的ファイルにとどまりません。インターネットコンピューターはあくまで「静的ファイルも」サポートしていて、基本的にコンピューターあるいはサーバーです。静的ファイルを保存する機能はあくまでその一部。
計算機能があるということはどのようなことが可能になるのでしょうか。
例えば、アクセスが来た際の人によって処理を変えら、権限によって表示する内容を変更することなどが可能です。もちろんこれに留まることはないでしょう。計算処理ができるということは幅広い機能を付与することが可能になります。
高価
しかしながら、容量で見た時の単価が非常に高価です。2022年時点で1 GB の値段は5ドル/年。
単純な比較はしてはいけないのですが、値段だけで見ると AWS の 0.3ドル/年程度 でありファイルコインもこの基準を目指すています。 0.3ドル/年 と比較すると高価です。
値段が高い理由を挙げてみましょう。
- インターネットコンピューターが稼働しているサーバーは高性能
- 7つに分散化されるという大前提
- コンピューター・サーバーとして計算能力
AWS S3とはいえ7拠点に分散は最安値ではできません。要は「高機能だから高い」ですね。
値段を下げるための工夫

現時点でインターネットコンピューターのストレージ利用料がすぐさま下がることはないでしょうが、いくつかさらに低価格でネットワークを利用できないか案が考えられています。
静的ファイルだけのサブネット案など
ファイルを置くには高価というのは、高機能ということです。そこで計算処理の能力は低くていいから、あるいは完全に無くていいから、ファイルを保存するだけのネットワークをインターネットコンピューターの中で構築するのも一つの手でしょう。
ストレージ以外は高性能でなくてよくなるので、マシンの価格がさがり利用料も下がることが考えられますね。
Badlands
価格を下げるもうひとつはBadlands(バッドランド)の構想。インターネットコンピューターの姉妹ネットワーク構想です。
名前だけきくとマイナスイメージですけれども国立公園の名称がもとになっています。
インターネットコンピューターのネットワーク手数料が高価になる原因は、非常に高価なサーバーを使用しているからです。スペックの低いマシンではネットワークに参加できません。
そこでバッドランドの出番です。安価なハードウェアでもネットワークに参加可能にし、ネットワークのパフォーマンスを一段落ちるが、安い価格でインターネットコンピューター相当を利用できるようにするという試みです。
金額の面でIPFS系は優位
インターネットコンピューターが高価ということは単純にデータを保存するという点ではデメリットでしょう。もちろん、セキュリティや分散性を考えるとあながち高価とも言えないですけれど、とりあえず保存して消えなければよいという目的なら安く利用できるArweaveなどのブロックチェーンが候補に挙がりそうです。
目的によって使い分けられる可能性
インターネットコンピューターをIPFSなどは、それぞれの技術が生まれた背景には目的があります。
インターネットコンピューターはワールドコンピューターを目的に作られています。規制検閲に耐性のあり落ちないクラウドのようなものですね。
IPFSなどは似てはいますが、規制検閲に耐性のあるファイル補完、Arweaveなどはデータの永久保存を目的にしていてちょっとずつ目的が違います。
現状のWeb2.0の世界では、データを保存するのにはリレーショナルデータベースだけでなくキーバリューストアをつかったり、目的に応じて利用するサーバーを変えたりするのは珍しいことではありません。
そう考えると、目的によってブロックチェーンやIPFSなど分散技術が使い分けられていく可能性があります。
まとめ
IPFSとインターネットコンピューターについての記事は以上です。最後にまとめます。
- IPFSは安価だがデータが消えることがある
- IPFSを利用したブロックチェーンとしてFileCoinとArweaveがある
- インターネットコンピューターは高価だが計算という付加価値がある
オールインワンであらゆる機能が使えるのは便利ですが、その分インフラ・コストに跳ね返ってきます。一方でファイルと計算処理がおなじブロックチェーンにあるというものも管理が楽にできるでしょう。
シンプルで構成するにはコストで負担したほうがよいことがあります。とくにインフラのランニングコストを最適化したせいで、人件費が余分にかかっては意味がないのでエンタープライズ領域なんかはインターネットコンピューター優位な部分はありそうだなと感じてはいます。
スペックの低いマシンでうごくであろうバッドランドは個人的にお気に入り。ただ過去にコミュニティに否決されています。本体のインターネットコンピューターが軌道に乗ったころにもう一度提案されないか楽しみにしています。